22歳で真性包茎の手術をしたときの話②

前回の続きです。

 

・2回目の診察

 後日、病院から電話がかかってきた。検査結果が出たので来てほしいという。これで全然違う別の病気が見つかったらどうしよう……(どうして結果くらい電話で教えてくれないのか)。不安な気持ちのまま病院へ行く。

 診察室に入ると、またあの失礼な先生が座っていた。

 「結果は問題ありませんでした。手術日ですが、いちばん早くて10日後の7月27日14時からの枠が空いてます。どうしますか」

 とりあえず何事もなくてほっとする。「わかりました。お願いします」

「手術は環状切除術という術式で行います。亀頭部分の包皮を切り、切り口を陰茎の根元と縫合します。皮は少し余らせて縫うので、いわゆる綺麗なズルムケにはなりませんが……あ、切った皮はどうしましょう」

「どうしましょう、というのは」

「記念に持って帰る患者さんもいるんですよ。ほら、へその緒を大事にとっておくってことがあるでしょう。タンスの奥に閉まったりして。あれと一緒です。ま、元は自分の体の一部ですからね。卒業記念みたいなものですよ」 

「はあ、そういうものですか。奇特な人もいるもんだな。まあとにかく、要りません」

「そうですか。それから、うちは大学病院なので研究の一貫として手術の様子を写真に収めておきたいのですが」

「サンプルとして使われるということですか。それは構いませんが……」

「最近はみなさんクリニックで手術されますから、大学病院じゃ貴重な症例になっているんですよ。こちらを読んで問題なければ研究への同意のサインをお願いします。サインしていただいたらさっそく手術前の状態を撮るので、ズボンとパンツを脱いでベッドに横になって待っていてください。私はカメラを持ってきます」

 そう言って先生は診察室の奥にあるカーテンの奥へと消えていった。カーテンの向こうは廊下になっていて、隣りあう診察室と廊下を共有してつながっているようだ。

 言われたとおり同意書にサインをして先生の机に置き、ズボンとパンツを脱いでベッドに横たわる。しかし、この格好で待ってろっていうのもなんだかな。どういう顔をして待っていればいいのかわからない。カーテンの裏側から看護師さんや他の医師の声や歩く音が聞こえてくる。先生はなかなか戻ってこない。ふいにカーテンが開き、若い看護師さんが顔を覗かせた。

「あっ!! すみません。失礼しました」

 看護師さんは動揺した様子で逃げるように去っていった。音がしなかったから診察室が空いているかをチェックしようとしたのだろう。そしたら突然ベッドで半裸のまま仰向けになっている男性が目の前に現れたのだから驚くのも無理はない……。いやでもこっちも驚いたから!!! この格好で待っていてくれと言われたこちらの気持ちも察してほしい。お互いに不幸である。そしてこの不幸を生み出したのは帰ってこないあいつだ。いったい何の罰ゲームなんだ。また同じことが起こってはいけないと思い、とりあえずパンツを履いてベッドに腰をかけることにした。しばらくして、先生が戻ってきた。

「お待たせしました。あれ? 準備はいいですか。パンツも脱いでくださいね」

 あなたが帰ってこないせいでこうすることになったのですが……と言うのも面倒だったので、素直に従うことにした。パンツを脱いで再びベッドに仰向けになる。先生は一眼レフを慣れた手つきで構え、何枚か写真を撮った。高精細なカメラで撮られた自分の陰部の写真を想像し、なんなんだこの状況……と思った。理解し難い。

 こうして手術の準備はすべて整い、あとは当日を待つだけになったのだった。