2024-04-10

 先日、職場の同僚と4人でお花見に行った。お花見に行くのは久しぶりだった。実家住まいのころは毎年親に連れ出されて仕方なしに行っていたが、自らすすんで行ったのは初めてだったと思う。

 一緒に行った同僚は、同期が2人と同期のひとりの先輩にあたる人が1人だった。同期の2人は友だちと言えるくらいには親しみを感じている人たちだ(相手がどう思っているかはもちろんわからない)。先輩は職場の階段ですれ違う以外で話すのはほぼ初めてだった。

 戸越銀座駅から散歩して五反田駅を過ぎ、目黒川沿いに着くと、例年より少し開花の遅れた桜はちょうど満開だった。レジャーシートを敷いた人たちがコンビニや屋台で買ったお酒と食べ物を囲みながら楽しそうに話していた。鬼ごっこに夢中の子どもたちの脇を通り過ぎながら4人で座れそうな場所を探す。茶色のベンチがちょうど空いていたので、そこで待機する班と買い出しに行く班に分かれた。わたしは少し話したかったので「待ちます!」と言って同期の1人と腰を下ろした。

 話していると、買い出し班がたこ焼きとフライドポテトを買ってきてくれた。そこで買い出し班の1人と交代して、もう1人の同期と2人でお酒を買いに行った。屋台のキューバサンド店が目にとまり、モヒートを注文することにした。メニューを見ると、桜の塩漬け入りのモヒートがあるらしい。すっかり桜に浮かれていたわたしたちはアルコール入りとノンアルをひとつずつを買った。キューバ出身と思われる店員さんが、「15,000円です!」と言った。無論、レジの電子表示には1,500円と書いてあった。鉄板ネタなのだろう。透明なコップに入った桜モヒートを受け取り去ろうとすると、その店員さんが「待って! ストロー忘れてるよ!」と呼び止めた。「ストローがないとモヒートじゃないよ!」

 今思うとそれも冗談だったのかもしれないが、「そうなんだ〜」と2人で納得した。ストローは赤色だった。ベンチに戻って飲んでみると、桜モヒートはその爽やかな見た目と裏腹、喉がキュッとなるくらい強烈な塩味で驚いた。正直、ストレートにおいしい、とは言えない感じの味。でもそのとき、ふと「あ、今わたしは、自由なんだな」と思った。行きたいところに行き、話したい人と話し、食べたいものを食べる。それ以上に望むことってたぶんない。今後は春が来るたび、友だちを誘って外に出かけよう。キューバサンドの屋台、来年もあるといいな。