2024-06-13

 川沿いを歩いていると小さな虫が固まりになってぶんぶん飛んでいる。ちょうど人の頭くらいの高さで飛んでいる。小さいので遠くからだと見えないが、うっかり近づいてしまうと(というより進行方向に虫たちが群れていると)顔のまわりをぶんぶん飛んでいるのに気づく。手をぱたぱたさせてはたいても数が多いのでなかなか離れてくれない。昔からよく見る虫だが名前を知らなかったので調べてみると、ユスリカというらしい。たぶん前にも調べたことがある。

 ユスリカは「カ」とついているが蚊ではないという。Wikipediaには「蚊とは科が異なる昆虫で」と書かれている。うまいこと言ったもんですね。蚊ではないので人を刺すことはない。口と消化器がないため非常に短命で、うまれてから数日で成虫になり、交尾をしたらすぐに死んでしまうらしい。数日で成虫になり、数日で寿命を迎える。

 一寸の虫にも五分の魂であるという。命は平等であるという。一方で生きる意味とか考えたりもする。では一寸の虫の生きる意味とは? そんな話をしたかったのではなく。どんな話がしたいというのもないのだけれど。社会福祉士のテキストを読んでいて、人間の寿命に関する記述があった。老化によって機能が低下した身体を医療や福祉によって維持する。その繰り返しの末、やがて死に至る。

 わたしの母方の祖父は、わたしが中学1年生のときに、多臓器不全で亡くなった。80歳くらいだったと思う。多臓器不全とは、要は寿命のことだろう。臓器の機能が低下して、これ以上身体を維持できなくなった、ということ。専門的な見地はわからないが、そういうふうに理解している。病院のベッドで、12月31日の深夜、だれにも看取られずに亡くなった。胸に置いてあった手帳に、かすれた文字で遺言が書いてあった。「See you again」。こんなふうに書けるのなら幸せな生涯だったろうなと思った。